非同期型ブロックチェーン Cosmosのロードマップ2.0
はじめに
前回はPolkadotについてと主なパラチェーンの紹介しました.今回は私が注目しているもう一つのプロジェクトCosmosの2022年のロードマップについて解説したいと思います.
Cosmosロードマップ2.0
Cosmos Roadmap 2.0には,2023年第1四半期までに提供される予定の主要なアップデートが多数記載されています.
https://hub.cosmos.network/main/roadmap/cosmos-hub-roadmap-2.0.html
2022年第3四半期のLambdaアップグレードでは,インターチェーンセキュリティのV1が導入される予定です.これによりCosmosハブがさまざまな”コンシューマー”ハブに対する”プロバイダー”チェーンとして機能し小規模なブロックチェーンがハブのセキュリティの恩恵を受けられるようになります.現在TerraやBSCのようなアプリケーションチェーンはサポートなしで独自のノードネットワークを用意し,独自のコンセンサスアルゴリズムとセキュリティを確立する必要がありました.インターチェーンセキュリティは資本力のないプロジェクトがハブチェーンからのセキュリティサポートを受けてエコシステムに参入できるようにすることで,この問題を解決します.PokadotのRelayチェーンと似たアイデアですが,C0smosの場合は,完全に独立したブロックチェーン同士の接続も行えます.おそらく独立したブロックチェーンを持つプロジェクトとCosmosハブのインターチェーンセキュリティーに接続しセキュリティーの恩恵を受ける小規模チェーンも共存するヘテロジニアス型に移行していくことを目指しているようです.ではあと一週間後に予定されているTheta アップグレードについて見ていきましょう.
Thetaアップグレード
2022年4月12日に配信予定のThetaのアップグレードは以下の機能を搭載する予定です。
インターチェーンアカウント
Cosmosネットワーク参加者は、すでに異なるチェーン上のアカウント間でトークンを共有することができますが、Thetaアップグレードには、他のハブのアカウントと対話する機能(EthereumユーザーがSmart Contractsと対話するのと同じような方法)が含まれています。インターチェーンアカウントは、Cosmosネットワークに他の大きな影響を与えるだけでなく、インターチェーンセキュリティへの重要なステップであり、基本的に開発者は既存の機能をそれが存在するハブに関係なく活用できるようになります。
COSMOS SDKの定期的なアップデート (v0.45)
リキッドステーキングは,2022年第2四半期に予定されているRhoのアップグレード時に実装されます.リキッドステーキングでは,基本的にユーザーはステーキング中にトークンをロックされることなく,ステークされたATOM(ATOMと同じ値動きのするトークン)で取引を継続することができます.ETHとLunaのリキッドステーキングを実装したLidoチームは2022年前半に予定されているリキッドステーキングのV1機能に基づいて,Cosmosの将来の開発案を提案しています.V1の実装では,特定のデリゲーター/バリデーターに関連付けられたATOMの表現が生成されます.Lidoの提案は、ユーザーが(ステーキング中にもかかわらず)トークンを保持することを可能にしながら、ステーキングされているという事実を特定のデリゲーターから本質的に切り離すものです.RhoのアップグレードにはNFT管理のためのNFTモジュールも含まれる予定です.
EVMOS
Ethereum Virtual Machine対応のEVMOS(ハブ)は、2021年からインセンティブ付きのテストネットの実験を行っており、2022年第1四半期現在、メインネットの立ち上げが進行中です.EVMOSは基本的にCosmos SDKを使って構築されたEVM互換のブロックチェーンであり、CosmosをEthereumに類似したDeFiハブに変えるための大きな一歩になる可能性があります。
たしか3月初旬にメインネットをリリースしましたが,バグが複数見つかりメインネットを一時停止してパッチを当てるなどしてテストを行い3月18日にリリースされたと思います.なぜテストネットでバグが見つからなかったのか謎ですがなんとか稼働にはこぎ着けました.
CosmWASM
CosmWASMは、Cosmos SDKと連動し、開発者が様々な言語でコードを書き,仮想マシンで実行させることを可能にするソフトウェアです.WebAssembly標準は、ユーザーの入力を受け取り,Cosmos SDKの状態遷移を確実に実行する一種の仲介言語として機能します.
これはAstarなどでも取られている手法でWebAssemblyを導入することで,開発者は様々なプログラミング言語でスマートコントラクトを記述することができるようになります.こちらはスマートコントラクトの開発者の参入障壁を無くすために重要なものです.
スーパーフルイド・ステーキング
ステーキングのアップグレードにより、ウォレットは流動性プールとバリデーターの両方から同時にステーキング報酬を獲得することができます.一時的な制限付きで開始されましたが、最終的にはOsmosisブロックチェーンの流動性を強化することになります.こちらはすでにいくつかの流動性ペアで始まっています.ATOM-OSMOSIS流動性提供中も例えばOSMOSISのステーキング報酬を得ることが可能です.こうすることによって流動性提供者はさらに多くのステーキング報酬を獲得できるようになっています.
ロードマップの歴史
2017年に非公開と公開のトークンセールでCosmos Networkを立ち上げて以来,CosmosはインターチェーンハブのMVPを展開し、2019年3月13日にメインネットを立ち上げ、KavaやBandプロトコルなどいくつかの注目すべきプロジェクトを取り込んできました。
2021年初頭は、IBCを立ち上げたアップグレードの名称である”Stargate”をめぐる展開が中心でした.Stargateに存在するアップグレードは,オリジナルのCosmos Whitepaperのロードマップを完成させるために計画されたものです.Stargateは2021年2月に実装され、以前はサイロ化されていたブロックチェーンが互いにトークンを送信できるようになりました.これにより150以上のTendermintベースのブロックチェーンが相互運用可能になっただけでなく,Cosmos SDKのブロックチェーンが他のブロックチェーンプロトコルと通信できるようになったのです.オンボードで相互運用が可能になったブロックチェーンにはBinance Chain, Chronos (crypto.com), Terra, Lunaネットワークが含まれます.
まとめ
2021年6月,Cosmos Hub開発チームがロードマップ2.0を発表した際,2021年から22年にかけての主な目的は,Gravity DEXの流動性強化,経済的安全性の強化(Interchain Stakingへの移行),ユーザーと開発者のUX改善を軸にまとめられています.昨年に行われた2つのアップグレード、コードネーム”Delta”と”Vega”は、それぞれGravity DEXとGravity BridgeをCosmos Hubに導入しました.
私はCosmosのDEXであるOSMOSISを利用していますが,上記の目的は確実に達成されつつあると思います.次の段階ではインターチェーンセキュリティーを導入し小規模なスタートアップが新しいブロックチェーンを立ち上げるのをサポートできるようにしていく目論見がありそうです.個人的に歓迎したいのはリキッドステーキングでこれが実現するとステーキング中のAtomを取引に使えるようになり自由度が広がります.これは最近の技術的傾向のようでAcalaでもリキッドステーキングの導入が予定されているようです.ETHの場合はLidoで預け入れるとETHと同じ値動きのするstETHをもらえますが,Atomも同じような仕組みでリキッドステーキングを実装すると予想されます.2022年は非同期型ブロクチェーンが流行すると思っているので,PolkadotとCosmosのアップデートはこれからも要チェックですね.
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