ACALAがWormholeとの接続を発表
はじめに
前回の記事でAcalaが目指すPolkadotにおけるDefiのハブセンターとステーブルコインaUSDの発行の仕組みなどを紹介しました.つい数日前にそのAcalaがWormholeとの接続することと今後複数のレイヤー1チェーンのトークンをサポートすることを発表しました.今回は簡単にこれからのAcalaのWormhole連携とそのリスクについて解説してみようと思います.
Wormholeについて
Wormholeは複数のEVM互換レイヤー1チェーンに接続するメッセージパッシング・プロトコルです.スマートコントラクトはそのWormholeネットワークを通じてメッセージを発し,そのメッセージはターゲットとなる宛先に送られる形でクロスチェーンブリッジを形成します.このシステムは,トークンやNFTブリッジによる異なるチェーン間での転送,クロスチェーンオラクル,メッセージングアプリケーションなどのクロスチェーン通信を可能にします.4月2日現在で8つのレイヤー1チェーンへ接続を提供し約39億ドルの資産がロックされています.また同日のThe blockの報道によると独自トークンHoleを発行し25億ドル規模の評価額が付く可能性について言及されています.どうやらHoleトークンの総発行量の7.5%をプライベートセールで1 HOLE = 0.25 USDで販売し最大で2億ドルの調達を目指しているようです.
AcalaがWormholeとの接続を発表
発表は数日前の3月30日に行われました.Acala Japan公式のMediumでの投稿は以下のリンクに記載されています.
ではこのWormholeへの接続の狙いは何なのでしょうか?その答えは簡単で,複数のレイヤー1チェーンへの接続を通して2000億ドルを超える流動性へアクセスするためです.具体的にはWormholeを通して以下のレイヤー1チェーンに接続可能になるようです.
- Avalanche (AVAX)
- Binance Smart Chain (BNB)
- Ethereum(ETH)
- Fantom (FCT)
- Oasis (ROSE)
- Polygon (MATIC)
- Solana (SOL)
- Terra (LUNA)
これは時価総額上位のEVM互換レイヤー1チェーンを網羅できるということを意味します.ちなみにBTCはPolkadotのパラチェーンであるInterlayを通じて接続されていくのでしょう.現在は最初の計画発表段階でまだトークンを転送してスワップや流動性提供を行ったりすることはできません.実装はこれから行われます.
Wormholeとのコミュニケーション機能が統合されるとaUSDの担保として他のレイヤー1チェーンのトークンやUSDCなどのステーブルコインが使えるようになるメリットがあります.これは歓迎すべきことですがいくつかリスクが生じるのでそれを説明していきましょう.
今回のWormhole統合に伴うリスク
Wormholeはつい最近ハッキング被害にあったばかりです.もちろんこれからはコード監査と内部統制的に再発防止に努めていくのでしょうが,やはり外部ブリッジ特有のリスクはこれからも付き纏います.さらに複数のレイヤー1チェーンを連携させる場合にはwrappedトークンの信頼性の問題も指摘されています.Wormholeハッキング被害とブリッジの危険性については以前に取り上げているので興味のある方は以下のリンクをご覧になってください.
https://btc-eth-diary.blogspot.com/2022/02/wormholel1.html
ここの部分はwormholeプロジェクトがこれから透明性のある形でどういった対策をとっていくのか注目です.
TerraとUSTに接続されるリスク
Wormhole接続先の中で最も警戒されているプロジェクトはやはりTerraとUSTになります.BTC準備金を導入することでアルゴリズミック型ステーブルコインの破綻リスクは軽減されたもののいまだに業界内で評価は分かれています(批判的な人はUSTはポンジスキームと呼んでいます).つまり例えばUSTを担保にaUSDを発行するような場合にはUSTのリスクをそのまま引き継ぐわけで緊急時のリスク回避プランは示してもらいたいです.いきなり接続はされないのでそこはAcala上でのガバナンス投票次第でしょう.私は現状では反対の意見です.
Wormhole統合のタイムライン
Wormholeの統合は,テストとオンボーディングプロセスの完了後にKaruraにまず統合され,その後に目立った問題がなければAcalaへの統合を開始する予定です.こういったときにはカナリアチェーンを有するPolkadot/Kusamaのエコシステムはリスクヘッジができていて安心です.いきなりAcalaへ接続して見つかっていなかった脆弱性を使われて大規模なハッキング被害というリスクはある程度ヘッジされているようです.
まとめ
AcalaはWormholeの統合で複数のレイヤー1チェーン上のトークンをDEX上に取り込むことができます.もちろんリスクは存在しますが,Acalaが目指す方向性としては正しい判断でしょう.後は他のプロジェクトのセキュリティーリスクへの取り組みとWormhole自体のガバナンスなどの問題になってきます.こちらはweb3.0財団などが業界全体に良い影響を与えると信じるしかなさそうです.
個人的にはInterlayを通じてBTCが接続されることに注目しています.やはり価値の保存手段という点ではBTCが突出しているのでそれがPolkadotのパラチェーンエコシステムへ接続されるのは要注目です.
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