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イーサリアムのThe Merge進行状況 (5/28/202)

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はじめに 先週までは色々バタバタしてしまい,ETH DevOpミーティングを追えていませんでした.また今週からThe Mergeが完了するまで報告を続けたいと思っています.では今週のミーティング内容を見ていきましょう. ETH DevOpミーティング概要 6回目のメインネットでのシャドーフォークが5/31に計画されています。 https://twitter.com/abcoathup/status/1529303473493520384 RopsetenでTTDが最大値に到達したためにBeacon Chainのジェネシスブロックを生成始める前に上書きが行われるようです。ミーティングでは5月30日にビーコンチェーンをRopsten上で開始し6/8のThe Mergeへの準備を整えていきます。 https://notes.ethereum.org/@timbeiko/ropsten-ttd-override メインネットの実行レイヤー 通常の議論が終わった後に、Difficulty Bombの延期について意見を交わしていました.一番多い意見はやはり延期をすることで、2〜4ヶ月の遅延をしてはどうかと提案していました.中にはこのままでも問題ないと強弁してる人もいて結論はまとまっていません。ただし、ほとんどの人は延期に賛成なので、これから議論を継続(ほぼ延期する方向性)するけれどもE I Pを正式に立ち上げると言ってました。最初のプロポーザルでは最小値をとって2ヶ月で提案されるようです。 実装には1ヶ月ぐらいかかるのでメインネット用のクライアントのリリース(Paris)と同時に実装されると予想されています。 ちなみにこれを行わないとブロック生成時間が伸びていきU Xが悪化します。この許容値についても開発者の間でコンセンサスはないようで、人によっては30秒!でもガスフィーでカバーされるとか無茶苦茶なことを言ってました。ただ皆、U Xの悪化がもたらす弊害については過去の事例から認識しているようで,20秒までが限度であるというのが多数派のようです。 ちなみにDifficulty Bomb自体はこのままメインネット上で発動されるので,その前兆現象としてブロック生成時間の伸びはすでに観測され始めています。 そのほかはEIP-4844(プロトダンクシャーディング)やEIP-2537 (B

Ethereumの大型アップデートThe Mergeとは

はじめに 下落相場で落胆している人たちが出だし市場は悲観モード突入ですが,こういった暗号資産の冬の時代には春に萌芽を付ける数々の技術的な開発が一気に進んだりもします.その中でも注目度からいったら今年最重要イベントといっても大げさでもないETHのThe Mergeが控えています.ここでは,The Mergeの簡単な説明をあらためて取り上げようと思います. The Mergeとは何か? 簡単に言ってしまえば,ETHの現在のコンセンサスアルゴリズムであるPoWをPoSへ切り替えることを意味します.The Mergeと呼んでいるのは現在PoSが走っているBeacon chainとPoWのメインのETHチェーンを統合してPoSへ完全に切り替えるためです.PoWとPoSについてはここでは詳細の説明を割愛しますが,前者は,マイナーと呼ばれる計算資源を提供する人たちが必死にハッシュ値を計算しその速度を競いあいながらネットワークのセキュリティーを維持するのに対して,後者はETH保有者がバリデータになるか持ち分のETHをバリデータに委任してネットワークの新規ブロックの書き込みを投票によって決定する仕組みと思ってもらえれば良いです. この切替には大きな意味があります.まずPoWでは大規模なGPUやASICをつかったマイニングファームによって大量の電気エネルギーを消費して取引承認(新規ブロックの承認と書き込み)を行っているためBTCほどではありませんがそのエネルギー消費量は無視できないレベルに膨れ上がっています.これがPoS方式に切り替わることで,ネットワークの取引承認やブロック書き込みにかかるエネルギーが99%削減できより低消費電力でセキュリティーを担保できます. PoSはまたそれまでPoWマイナーに支払われていた新規ブロックのリワード報酬をステーキングを行うバリデータ(ユーザーですね)に還元を行います.つまりETH保有者はステーキングに参加することで,ネットワークのセキュリティーを守ると同時にロックアップ期間中には数%程度の年利でステーキング報酬が受け取れます.ETHのビジョンを共有し,長期保有を行うユーザーにとっては非常に嬉しい仕組みとなっています. The Mergeはいつ行われるのか? この質問への簡単な回答は今年の8月か9月ぐらいということです. もっと長く回答するなら,ETH

BinanceのCZがあらためてUST-LUNA崩壊騒動について声明文を発表

はじめに 今回のLUNA, UST破綻は様々な教訓を残したと私は考えていますが,バイナンスの創業者であるCZも同意見のようです.CZは金曜日に声明文を発表しました.非常に示唆に富む内容で一読に値しますが,私の要約と今回得られた教訓について当ブログに掲載いたします.なお日本語全文はまもなくバイナンス側から発表されると思うので著作権の都合で割愛いたします. https://www.binance.com/en/blog/leadership/czs-faq-8--on-lunaust-and-taking-the-right-risks-421499824684903883?ref=AZTKZ9XS&utm_source=BinanceTwitter&utm_medium=GlobalSocial&utm_campaign=GlobalSocial CZ発表文の要約: LUNA-USTの設計上の欠陥を理論的に言えば,ある資産に別の資産を担保にペッグすると,担保不足やデペッグの可能性があります.10倍の担保超過であっても,担保資産は10倍以上に暴落する可能性があります.この世界では,100%安定したものはないのです. もう一つの根本的な欠陥は,過剰なインセンティブです.具体的には,Anchorの20%固定APYは,成長を促進するためのものです.ふわふわしたものをすべて取り除き,ファンダメンタルズを見てみましょう.インセンティブを使ってユーザーをエコシステムに引きつけることはできます.しかし,最終的にはそれを維持するための“収入”,つまり経費を上回る収益を上げる必要があります.そうでなければ,資金が尽きてクラッシュしてしまいます. しかし,この場合,プロジェクトチームはおそらく自分たちのトークン販売やLUNAの価値の上昇を“収入”として含めたため,“収入”のコンセプトが混乱しています.このやり方は欠陥があります.インセンティブがあるから人が入ってくる,そう,LUNAの評価額は上がるのです.そして,より多くのインセンティブが,より多くの人に配られます.しかし,まだ何の価値も生み出していないのです. 今となっては,全体が自己増殖的で浅はかなコンセプトの上に成り立っていたことは明らかです.Terraはいくつかのユースケースを持つエコシステムを持っていました

2022年の大事件 LUNA - USTの崩壊

はじめに さて,皆さんは先週の暗号資産下落をどう捉えたでしょうか?私は,何もできずただ傍観者としてLUNAとUSTが崩壊してく様子を眺めていました.数年ぶりの大きな事件だったのは確かで今回はそのストーリーを自分の調査も兼ねて紹介したいと思います. LUNA – USTが崩壊 LUNA-USTのメルトダウンはゆっくりと不気味に始まり,そして誰もが予想したよりも早くエスカレートしていきました. きっかけは,5月7日(土曜日)Curveでの大規模な売りから始まりました.以前の記事でも説明したように立ち上がったばかりのCurve上の4poolに資金を移動するスキを狙われたのがキッカケになったのです. 具体的にはUST運営がCurve上の運用資金を3poolから4poolに移動させるとき攻撃者による8500万USD相当のUSTからUSDCへのスワップがあり,3poolはわずかにバランスを崩しました.Curve上のプールのバランスを戻すため,5万ETHが売られ,さらに2万ETHがBinanceに送られました.この時点で何かが起きているという噂がTwitter上に一気に飛び交いだし私も観察していました. 噂ではBlackRockとCitadelが手を組み,Geminiからまとまったビットコイン(10万BTCという噂)を借りてUSTに売り込んだという噂がすぐに流れましたが,その後3社とも反論しています.相場の値動きを見る限りではこの時点ですでに攻撃者はBTCのショートポジションで多額の利益を得ています. Terraの設計メカニズムが脆弱だったため十分な資本と大混乱を引き起こす気概があれば,誰でも比較的単純なUST裁定取引で大儲けすることができました.暗号資産の世界でも,そのようなことを実行できる人は少ないですが,攻撃者はまだ特定されていません. USTは5月8日(日)に0.98ドルまで下落しましたが,Kwon氏が登場すると回復の兆しを見せました.’私は起きている-面白い朝だ”と彼はツイートしていました.誰かがTerraはBitconnect詐欺を思い出させると言うと,Kwonはその数分後に反論しました. 5月9日,新しい週が始まると,暗号資産メディアはTerraの不安定な週末をドラマが終わったかのように振り返っていました.LFGは,主力商品を守るために,15億ドル(半分はビットコイ

Cosmosのガバナンス投票が揉めている件について解説(CosmWasm in Rho Upgrade)

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はじめに 読者からのコメントでブロックチェーンプロジェクトのオンチェーンやオフチェーンでのガバナンスがどうなっているのか質問を受けていた直後にとても面白い事例が発生しているので解説してみようと思います.これは,Cosmos Proposal #69 “Include CosmWasm in Rho Upgrade”に対しての投票についてです。  Cosmos のガバナンスの仕組み まず今回取り上げるCosmosにおけるオンチェーンのガバナンスの仕組みについて簡単に説明しておきます.まずオフチェーンで開発者が新しいアップデートなどに何を含めるか決定していきます.そしてそれをCosmos Proposalという形でオンチェーン上の投票にかけて実際にユーザーによるブロックチェーン上の投票が行われます(ざっくり説明しているので詳細は省いています). ユーザーは,Keplrなどのウォレットアプリでオンチェーン上にAtomを保持していれば直接投票することが可能です.さて,株式投資などを行っている場合には,決算時の株主総会などでの経営陣からの提案事項への投票行為と思っていただければ理解し易いと思います.ユーザーはオンチェーン上で,”Yes”, “No”, “Abstain”, “No with veto”を選択できます.Abstainは“棄権”の意味で,これは株主投票でもよく見かけるものと同じ意味で投票を棄権するということです.“No with Veto”は普通は株主投票では存在しません.この場合の意味はプロポーザルを拒否し,チェーンから離れるという意思を示すことです(実際に離れるわけではありません). さて,プロポーザルが通るには一定数のAtom保有者が賛成(”Yes”)に投票し多数派であることとその投票したAtomの量がしきい値を超える必要があります. ハブミニマリズムとは? COSMOSハブはインターチェーンのセキュリティーを担保するためだけに存在し,Cosmos本体には脆弱性が発生する可能性のあるスマートコントラクトの機能を含めないほうが良いという考え方です.確かにシンプルなことはセキュリティーを担保する面では非常に簡単な方法で,思想としては理解できます.またインターチェーンのハブを目指すプロジェクトであることからスマートコントラクトは,それに繋がる他のブロックチェーンに