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イーサリアムのThe Merge進行状況 (5/28/202)

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はじめに 先週までは色々バタバタしてしまい,ETH DevOpミーティングを追えていませんでした.また今週からThe Mergeが完了するまで報告を続けたいと思っています.では今週のミーティング内容を見ていきましょう. ETH DevOpミーティング概要 6回目のメインネットでのシャドーフォークが5/31に計画されています。 https://twitter.com/abcoathup/status/1529303473493520384 RopsetenでTTDが最大値に到達したためにBeacon Chainのジェネシスブロックを生成始める前に上書きが行われるようです。ミーティングでは5月30日にビーコンチェーンをRopsten上で開始し6/8のThe Mergeへの準備を整えていきます。 https://notes.ethereum.org/@timbeiko/ropsten-ttd-override メインネットの実行レイヤー 通常の議論が終わった後に、Difficulty Bombの延期について意見を交わしていました.一番多い意見はやはり延期をすることで、2〜4ヶ月の遅延をしてはどうかと提案していました.中にはこのままでも問題ないと強弁してる人もいて結論はまとまっていません。ただし、ほとんどの人は延期に賛成なので、これから議論を継続(ほぼ延期する方向性)するけれどもE I Pを正式に立ち上げると言ってました。最初のプロポーザルでは最小値をとって2ヶ月で提案されるようです。 実装には1ヶ月ぐらいかかるのでメインネット用のクライアントのリリース(Paris)と同時に実装されると予想されています。 ちなみにこれを行わないとブロック生成時間が伸びていきU Xが悪化します。この許容値についても開発者の間でコンセンサスはないようで、人によっては30秒!でもガスフィーでカバーされるとか無茶苦茶なことを言ってました。ただ皆、U Xの悪化がもたらす弊害については過去の事例から認識しているようで,20秒までが限度であるというのが多数派のようです。 ちなみにDifficulty Bomb自体はこのままメインネット上で発動されるので,その前兆現象としてブロック生成時間の伸びはすでに観測され始めています。 そのほかはEIP-4844(プロトダンクシャーディング)やEIP-2537 (B...

非同期ヘテロジニアス型ブロックチェーンネットワーク(Polkadot, Cosmos, Avalanche)の比較

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はじめに Bitcoinはデジタルゴールドとしての地位を確立し,Ethereumはプログラム可能な通貨の時代を切り開き暗号資産市場を今でも牽引しています.しかし,それらの第一世代ブロックチェーンネットワークは,アクティブユーザー数の増加に伴いネットワーク性能,使い勝手,エネルギー効率,分散性の面などのバランスの中でスケーリング問題に直面しています. 現在の深刻なスケーリング問題を解決するためにEthereumはPoSへの移行とShardingやレイヤー2の実装を急いでいます.重要なのはこの時期に,Cosmos, Polkadot, Avalancheという新世代のブロックチェーン・プロジェクトが相次いで立ち上げられ,優れたインフラが確立されたことです.これらのプロジェクトは,各アプリケーション専用のブロックチェーンが共存し,かつ必要なときに相互運用できる,非同期かつ異種混在型のネットワークモデルによる水平的な拡張を目指しています.これらのネットワークの目標は,今日の数十万人のアクティブユーザーへの普及ではなく,数百万人の日々のアクティブユーザーを収容できるブロックチェーンインターネットを構築し,”インターネットはユーザーが所有しコントロールする“というweb3のビジョンを実現することにあります.今回は,私が注目しているこの3つのプロジェクトが暗号資産ネットワークのパラダイムシフトでありそれらを理解するために解説していきます. 今回は以下のサイトを翻訳し参考にして作成しました. https://coinyuppie.com/parsing-cosmos-polkadot-and-avalanche-differences-in-heterogeneous-blockchain-networks/ Cosmos,Polkadot,Avalancheはいずれも,非同期異種ネットワークモデルによる水平方向の拡張を目指しています.これら3つのネットワークでは,アプリ固有のブロックチェーンが異なる仮想マシンを持ち,必要に応じて相互運用が可能です.詳細を説明する前にこれら3つの違いを端的に表した以下の図を見てください. Cosmos, Polkadot, Avalancheのネットワークトポロジー https://coinyuppie.com/wp-content/uploads...

オピニオン:暗号資産とDeFiはシャドーバンキング2.0?

はじめに 今から15年前,米国のリーマンブラザーズの破綻から始まる連鎖的な金融危機により信用縮小を起こし世界中にその影響が波及していきました.私にとって印象に残っているのはその時にちょうどH1B Visa (エンジニアなどの高度技術を持った人材向けの就労ビザの一種です)の申請をしていて,本来なら募集定員を軽くオーバーする申請があってくじ引きになるところ2009年の4月というリーマンショックの直撃を受けた直後で各テック企業が人員募集をほぼ停止したため逆に定員割れを起こしあっさり通ったことでした.その頃は大した金融資産を持っていなかったので全然他人事のように感じていましたが,今思うとすごい時期に渡米したなと思います.幸い私をスカウトしてくれた会社は設立されてまだ4年弱ぐらいで急激に自己資本を使って成長していたので影響はほとんど受けず,むしろ業績をその後数年間で何倍にも伸ばしていきました. しかし,そんな例は稀で世間は不景気で暗い雰囲気だったことを覚えています.またその後に政府によって問題を起こした金融機関や保険会社が巨額の税金で救済されるモラルハザードが発生し一般の人々が憤慨しその後も遺恨を残しました.その当時FRBは初のゼロ金利政策で景気を下支えようとし,大規模金融緩和が世界中で始まりついに世界の金融市場が日本化したと騒がれていました. それから15年が経過し暗号資産が静かに生まれ,ついにDeFiという既存の金融機関の枠組みや政府のコントロールから外れた特殊な金融エコシステムが生まれようとしています.そんな中,暗号資産やDeFiに批判的な人たちはDeFiが2008年の金融危機をまた引き起こすかもしれないと騒いでいます.ではそれは本当でしょうか?今回は,Hillary J. Allen氏によって発表された以下のエッセイ(DeFi: Shadow Banking 2.0?)を読み解き考えてみようと思います. https://newsletters.theatlantic.com/galaxy-brain/624cb2ebdc551a00208c1524/crypto-bubble-web3-decentralized-finance/ https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=4038788&utm_s...

Uniswap V3でのインパーマネントロス解説(集中レンジでのL Pの場合も含めて)

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はじめに DeFiで流動性(LP)提供を始める時必ず説明サイトなどで出てくる用語としてImpermanent Loss (IL : 変動損失)が出てきます.最初は何を意味しているのか分からないと思います. 例えばこんな説明を見かけます. ”IL(インパーマネントロス)とは,LPポジションに含まれる2つの資産(トークン)の価格の比が変わり,AMM(自動マーケットメイカー)によりリバランスされた結果、発生する損失のことです.ILは,LPに含まれる2つの資産をそれぞれ単独で保有した場合と比較した損失です.” これだけだと何を言っているかよく分かりませんね.ここでは従来の1:1のバランスでL Pポジションを組んだ場合のILの理解と同時にUniswap V3の集中流動性の場合を説明していきます. インパーマネントロスとは? では最初に従来の1:1でLPポジションを組んだ場合から考えてみましょう. 例えば,3200 USDCと1.0 WETHでUniswapで1:1でポジションを組んだとします(1ETH = 3200 USDと仮定します).開始時の資産額は3200 USD + 1 WETH (3200USD) = 6400 USDとなります. ここで1 WETHが4000 USDまで値上がりしたとしましょう.すると,このLPポジションは,0.894WETHと3576 USDCに変化しました. この時の資産額は,0.894 X 4000 + 3576 = 7152 USDとなり,7152 USD – 6400 USD= 752 USDの利益が出ていることになります. 利益が出ているからひとまず安心です.でもここで両方をそのまま持っていた場合を考えてみましょう.その場合は,4000 USD + 3200 USD = 7200 USDになり,7200 USD – 6400 USD =  800 USDの利益になる結果になります.この場合はそのまま持っていたほうが800 USD – 752 USD = 48 USD 分のプラスの利益が出せていたことになります.逆の言い方をすれば,LP提供をしたために,48 USD分の損失が出たことになります.これがインパーマネントロスです.実際にLP提供を行っている期間には取引手数料が別途利益として手に入るので,それが48 USD分を上回ればイ...

オピニオン:web3と暗号資産の日本での政策議論

はじめに 日本では,長田町で次世代webであるweb3.0であったりとかNFTの議論が起きそれから税制改革や競争力強化について前進しそうな気配が見えてきましたが,2017年から暗号資産(ここでは仮想通貨と呼びます.この呼称は海外では一般的ではありません.)に投資してこの業界を見てきた自分からすると用語を変えただけでこうも印象が変わるのかと驚いています. ここでは,自分の考えと感じたことについて述べていきます. ブロックチェーン技術は有望でBTCには懐疑的? これは2017年頃にもよく見られた議題でした.ブロックチェーンという技術がこれからは有望で仮想通貨と呼ばれるBTCとその他はなんだか詐欺っぽいという言説です. これもただ単に上辺だけの情報をなぞってなんとなく“BTCはやばそう”で“ブロックチェーン技術”はこれから応用範囲がありそうだと一般の人たちは思ったことでしょう. でも両者がほぼ同じものであることは一般の人々にはよく理解されていません.ブロックチェーン技術単体で見た場合,技術的な観点からは冗長性がやたら高くてリソースが大量に必要な非効率なデータベース(分散型台帳)に過ぎません.PoWによるコンセンサスアルゴリズムは大量の演算リソースを消費しますし,決して効率的なシステムとはいえないでしょう.たとえセキュリティーが守られることなどをアピールしても単体ではこれほど注目されなかったはずです. BTCはP2Pネットワークを介したブロックチェーン基盤で作られたからこそ,ブロックチェーンがここまで価値がある技術だと認識されたのです.つまりブロックチェーンとBTCは同時に登場し同じぐらい重要なもので,ブロックチェーン≒BTCと言っても過言ではありません.しかしBTCは怪しいし詐欺が横行しているからやばいものだというイメージが一般大衆に定着しました(とくにCoincheckハッキング事件のあとには). 繰り返しますが, BTCはブロックチェーン技術がなければ存在していません. ブロックチェーン技術はBTCがなければこれほど発展し普及することはなかったでしょう. 日本政府が技術的なことを理解せず通貨として仮想通貨の取引を認める法律を2017年に通したために日本市場と韓国などのアジア市場が牽引する形でBTCバブルは加熱し,その後Coincheckのハッキング事件と税金面での厳し...

Uniswap 1Q 2022の概観

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 はじめに MessariからUniswap 1Q 2022のレポートが発表されました.今回はそのレポートの注目部分を引用しながら現在のUniswapエコシステムの状況を読み解いてみようと思います. もとになったレポートは以下のリンクから参照できます. https://messari.io/article/state-of-uniswap-q1-2022 レポートの要点 - 2021年第4四半期からの暗号とNFTへの関心の高まりが落ち着き,2022年第1四半期の総取引量と,それに伴う流動性プロバイダーの手数料は減少. - Uniswap on Polygonは有機的な成長を遂げ,V3の非Ethereumプラットフォームとして,稼働が最も遅いネットワークであるにもかかわらず,取引量ではトップとなった.次四半期の流動性マイニングの追加インセンティブは,引き続き成長を促進するものと思われる. - コミュニティは,CeloとGnosis Chainへのさらなる拡張のための領域を模索. - Uniswap Grants Programは,2021年末からの助成金提案が混在するWave 6で史上最大の助成金を交付. Uniswapの概要 UniswapはOptimism,Arbitrum,Polygonなどのスケーリングソリューションとともに,ETHネットワーク上のトークンの取引を促進しています.このプロトコルとDAppは,分散型取引所(DEX)のパイオニアとして知られており, まずV2においてプールされた流動性のX*Y=K一定価格曲線を一般化し,その後V3において集中流動性と時差取引手数料の機能を実現しました.この一定価格曲線であるX*Y=Kは業界の他の多くのDEXで実装されています.流動性集中モデルと多段階設定の手数料は,DEXアプリケーションの中では比較的新しくユニークな存在であり続けています(これはコピープロジェクトを防ぐために商用ライセンスを変えたことも相好しています). 簡単にまとめると、AMMは前述のアルゴリズムでバランスを取ったし菌プールにトークンをペアリングします.流動性供給者(LP)は流動性プールに資金を預け,トレーダーはトークンの出し入れを行うことで取引を行い,事実上プールと取引を行うことになります.LPは流動性を提供する代わりに,トレーダーが支払...

Curve戦争がTerraとMakerDAOの間で勃発?

主なポイント - Terraは、Curve Financeにおいて同社のフラグシップであるUSTステーブルコインのための新しい高インセンティブの流動性プールを立ち上げる予定. - 現在最大のステーブルコインのプールである3poolとは対照的に,4poolはDAIを除外しUST,FRAX,USDC,USDTを含むことになる. - Terraの積極的な動きの明確な目標は,3poolの流動性を枯渇させることであり,これはDAIの安定性と魅力に有害な打撃を与えることを証明する可能性がある. はじめに 最近何かと話題のTerraform Labs CEOで創設者のDo Kwon氏は、MakerDAOのDAIに対して公開攻撃を行い,競合するDAIステーブルコインの流動性を奪い,永久に転覆させると宣言しています. 以下はCryptobriefingの記事を翻訳して加筆したものです. https://cryptobriefing.com/could-terras-new-curve-pool-kill-makerdaos-dai/ TerraがDAIに公開攻撃へ USTの時価総額が約2倍になった後、TerraはMakerDAOのDAIにさらなる打撃を与える準備を進めています. “私の手で$DAIは死ぬ”とTerraform LabsのCEO兼創業者のDo Kwon氏は3月23日にツイートしました.その1週間後,彼はいわゆる "4pool "を導入することで,その脅しを実行に移しました.提案されたプールは,同価値の資産を扱う最大の分散型取引所であるCurve Financeの流動性プールの形をとり,4つのステーブルコインで構成される予定です.TerraのUST,Frax FinanceのFRAX,TetherのUSDT,CircleのUSDCの4つのステーブルコインで構成されます. その目的は現在提携しているアルゴリズム型ステーブルコインUSTとFRAXに高い流動性を確保し,競合する分散型ステーブルコインDAIに流動性を枯渇させることにあります.金融の世界では,流動性とは特定の取引所で取引可能な暗号資産の量のことを指します.流動性はある資産がその市場価格に影響を与えることなく,いかに簡単に他の資産と交換できるかを決定するため,非常に重要な指標です.流動性が高ければ...

Yield-bearing (利回り保証型) DeFiトークン ERC-4626

要点     Yield-bearing (利回り保証型) DeFiトークンの新しい規格であるERC-4626が決定しました.     ERC-4626は,Yield-Bearingトークンをより安全で他のDeFiプロトコルに統合しやすくすることを目的としています.     Yearn Finance,Alchemix,Balancerなどいくつかのプロトコルが,ERC-4626標準の実装を計画しています. https://eips.ethereum.org/EIPS/eip-4626 はじめに 通常のトークンはERC-20規格,今話題のNFTなどにはERC-721またはERC-1155などが使われています.今回の提案はDeFi Vaultプロトコルで提供されるYield-Bearing トークンに特化した標準規格を策定するものです.それはERC-4626と呼ばれ,DeFiのコンポーザビリティ問題を解決し,利回りの高いトークンをより安全なものにするのに役立つと考えられます.以下にERC-4646 について紹介していきます. ERC-4626とは? Fei Protocolの共同創設者であるJoey Santoro氏が1月に初めて提案したERC-4626は,DeFiプラットフォームで使用されている無数の異なるYield-Bearingトークン (利回り保証型トークン)を標準化しようとしています.現在,ERC-4626の規格が確定したことで,複数のDeFiプロトコルはこれを統合する準備を進めているようです. 現在,DeFi Vaultプロトコルの開発チームは、主に独自のソリューションを使用して,利回り生成を管理しています.このアプローチは現在一般的な方法ですが,いくつかの重大な欠点があります.各DeFi Vaultプロトコルのコードにはわずかな違いがあるためYield-Bearing トークンを異なるDeFi Vaultプロトコル間で相互作用させるには,多くのリソースが必要となることです.さらに,より複雑な回避策がコードに実装されることによってDeFi Vaultプロトコルはより多くの潜在的な脆弱性にさらされることになります. 例えば,昨年2月に発生した Rari Capitalに対する攻撃 は、同社のAlp...

ACALAがWormholeとの接続を発表

はじめに 前回の記事でAcalaが目指すPolkadotにおけるDefiのハブセンターとステーブルコインaUSDの発行の仕組みなどを紹介しました.つい数日前にそのAcalaがWormholeとの接続することと今後複数のレイヤー1チェーンのトークンをサポートすることを発表しました.今回は簡単にこれからのAcalaのWormhole連携とそのリスクについて解説してみようと思います. Wormholeについて https://wormholenetwork.com/ Wormholeは複数のEVM互換レイヤー1チェーンに接続するメッセージパッシング・プロトコルです.スマートコントラクトはそのWormholeネットワークを通じてメッセージを発し,そのメッセージはターゲットとなる宛先に送られる形でクロスチェーンブリッジを形成します.このシステムは,トークンやNFTブリッジによる異なるチェーン間での転送,クロスチェーンオラクル,メッセージングアプリケーションなどのクロスチェーン通信を可能にします.4月2日現在で8つのレイヤー1チェーンへ接続を提供し約39億ドルの資産がロックされています.また同日のThe blockの報道によると独自トークンHoleを発行し25億ドル規模の評価額が付く可能性について言及されています.どうやらHoleトークンの総発行量の7.5%をプライベートセールで1 HOLE = 0.25 USDで販売し最大で2億ドルの調達を目指しているようです. https://www.theblockcrypto.com/post/140100/crypto-bridge-wormhole-seeks-2-5-billion-price-tag-in-private-token-sale AcalaがWormholeとの接続を発表 発表は数日前の3月30日に行われました.Acala Japan公式のMediumでの投稿は以下のリンクに記載されています. https://medium.com/acala-japan/acala-karura-dotsama%E3%82%92wormhole%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%83%81%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%83%96%E3%83%AA%E3%83%83%E3%8...

ステーブルコインの種類と利用方法

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はじめに 暗号資産を始めたいけれど,そのボラタリティー(価格変動)の高さで敬遠している個人投資家も多いことでしょう.このボラタリティーの高さが初期の投機目的で暗号資産へ投資をしていた人々を惹きつけていた要因でもありますが,余剰資金を貯めて増やしたい一般の人にとってはリスクが高すぎて参入を躊躇う主な要因でもありました.ステーブルコインは暗号資産へ投資は行いたいけれどもボラタリティーのリスクを抑えたい投資家の需要に応えるものです. 一般的にステーブルコインはBTCやETHとは違い法定通貨(ほとんどの場合USD)に1:1にペッグする形で提供されるので下落局面で一時的に資金を引き上げる場面などで便利な存在です. また一般の決済に使用する場合には送信主と受信者両方とも価格が安定している方が都合が良いことが多いです.そのような理由から,暗号資産の取引や利用を活性化させる非常に重要な存在です.現在,市場には様々なステーブルコインがすでに存在しており,今回は簡単に分類とそれぞれの特徴を紹介していきます. ステーブルコインの種類 ステーブルコインにはざっくりと以下の3種類に分けられます. 法定通貨担保型 – USDT (Tether), USDC(Circle), TUSD (TrueToken), GUSD(Gemini) 暗号資産担保型 – DAI (MakerDAO), aUSD (Acala) 無担保型 – UST (Terra),TITAN(消滅しました) 簡単に表にまとめるとそれぞれ以下のような特徴があります. 法定通貨担保型 歴史上,一番最初に登場したのがUSDTでこれは発行主体はTether社になります.流通量もすごい額で現在時価総額で約10兆円規模に到達しています.裏付けになる資産はUSDと等価物となっていると説明していましたが,最近の監査結果などが公開されそのほとんどをC P (コマーシャルペーパー→社債のことです)で保有していることが報告されています.様々な噂が燻り続けており正直,実際どれだけ裏付け資産を1:1の割合で保持されているのかどうかは暗号資産界隈では長年議論され続けています. 一方で比較的,透明性があるのはUSDCでこちらはCircle社が発行を行っています.現在も定期的な監査で十分な情報開示が行われており,将来的には米国債で裏付け資産のほとんどを保有...

Polkadot基盤のDeFiハブ ACALA (ACA)とaUSDの概要解説

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はじめに 昨年末に注目を集めたPolkadotのパラチェーンオークションで記念すべき初のパラチェーンとしてオークションを勝利したのはAcalaプロジェクトです.AcalaはPolkadot基盤のDefiハブを目指すプロジェクトでステーブルコインのaUSD を発行及び流動性提供や分散型ファンドを実現しようという大変野心的なプロジェクトです.私もPolkadotには非常に注目しており,実際にAcalaのプログラムにも参加した経緯があるのでその内容も含めて今回はAcalaの紹介をしたいと思います. Acalaの特徴 名前からしてすごいですが,Acalaは不動明王のサンスクリット語表記です.Googleで検索する時は”Acala cypto”を入力してください.でないと不動明王の画像がいきなり引っかかります笑. 公式websiteは https://acala.network/ ですでにPolakadotからDOTを転送するブリッジ機能を備えたAMM型取引所のDAppであるAcala sSwapが立ち上がっています( https://apps.acala.network/ ). ちなみにKusama上でもパラチェーンを持っていて、そちらはKaruraという名前のプロジェクトになります.プロジェクトの目的はずばりPolkadot上のDefiハブになることで現在は異なるブロックチェーンのDeFiユーザーや開発者がスケーリング問題やガス代高騰などを気にせずにAcalaネットワークに移行できる環境を整備しています. ちなみにセキュリティーはPLOの仕組みによりクラウドローンで集まった大量のDOTをロックすることによって担保されており,Polkadotの強固なセキュリティー基盤を共有することで実現され得ています.そのため後ほど説明しますが、インフレーション型のトークン発行やステーキングを提供する必要がなくネイティブトークンであるACAは流通量がすでに決められており分配方法もすでに決定されています(ガバナンス投票次第ではこれから配る部分は変更される可能性あり). ETH互換のレイヤー1チェーンの仕組みとスマートコントラクト Polkadot上で動作するAcalaチェーン自体はEVM互換のスマートコントラクトに対応しており,イーサリアムとの互換性を備えています.このEVMはPolkado...

DeFi研究 DeFi Llamaでの情報収集

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はじめに DeFi分野に参入するとものすごい数のプロジェクトが存在していることに驚かされます.もともとはETH基盤でのDappによって始まったDeFiの爆発的人気の上昇で現在のように様々なレイヤー1チェーンでDeFi関連のDappが立ち上がっていきました. レイヤー1だけで分類するだけでも大変ですが,それぞれで立ち上がっているサービス全てを網羅するのはたぶんほとんどの人にとって不可能でしょう.今回はそういうカオスなDeFiの世界の情報を収集するのに便利なDeFi Llamaを紹介します. DeFi Llamaとは? 公式サイトはhttps://defillama.com/で公開されています.各DeFiプロジェクトのTVL(Total Value Locked)アグリゲータ情報をオープンに公開するサイトを運営しています. DeFi Llamaのトップページ  Uniswapの統計情報表示(Uniswap.info)と似たデザインを採用しており,各レイヤー1チェーン,TVL,トークン付与の有無などで分類して情報表示させることが可能です. サイト情報のAboutを覗いてみると以下のようなミッション・ステートメントが書かれています 原文(英語) Mission DefiLlama is the largest TVL aggregator for DeFi (Decentralized Finance). Our data is fully open-source and maintained by a team of passionate individuals and contributors from hundreds of protocols. Our focus is on accurate data and transparent methodology. We track over 800 DeFi protocols from over 80 different blockchains. 日本語訳 ミッション DefiLlamaはDeFi (Decentralized Finance)のための最大のTVLアグリゲータです.私たちのデータは完全にオープンソースで,何百ものプロトコルの情熱的な個人と貢献者のチームによって維持されています. 私たちの焦点は...

Solana基盤のステーブルコインプロジェクトCashioハッキング発生

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はじめに Wormhole事件でSolana-ETHブリッジの脆弱性をアタッカーに狙われ多額のETHとSOLが盗まれた事件がありましたが,今度はSolana基盤のステーブルコインプロジェクトであるCashioで無限ミントグリッチによってCASHトークンの価値が1USDからほぼゼロにまで急落する事件が発生しました.正直またかと思いましたが,2800万ドル相当がハッキングにより流出したのが原因のようです. Cashioハッキング事件の現在までの経緯 ソラナ基盤のステーブルコインを発行するプロジェクトで2021年11月にリリースされました.SaberでUSDT-USDCの流動性提供のLPトークンをデポジットすることで誰でもUSDにペッグしたCASHトークンを発行できるのが特徴です.SaberはUniswapのようにAMM型の分散型取引所をソラナ上で提供するDappのことです. 今回の攻撃手法は,スマートコントラクトコードの脆弱性を突いて担保を提供せずに多量のCASHトークンをミントすることが行われました.Solscanを見るとアタッカーが20億CASHを発行し,全てを他のステーブルコインにSaber上でスワップしたのが分かります.Saberはこの事件発生直後にCASH関連の流動性プールすべてを停止したとアナウスしました. この結果,1USDにペッグされる CASHトークンは一気に0.00005 USDまで下落 することになりました(記事執筆時点では0.000098 USDまで回復してます). Cashioの開発者である0xGhostChainはCASHのミントを行わないように注意喚起し,開発チームが事件を調査中であると発表しています. 前回Wormholeハックでも技術的なハッキング手法の詳細を紹介していた Samczsun氏が今回も事件の原因と攻撃手法について報告 しています( この人はやけに詳しいなと思ったらParadigmともリサーチ契約してるようです). 昨年似たような事件でいくつかのDefiプロジェクトでハッキングが発生していますが,これほどの被害規模になったのはソラナ人気のためで皮肉な結果となりました. CryptoBriefingの記事 によれば最近発生したNFTのラグプルに関連した犯人と同一犯である可能性が指摘されています.OpenSeaで同一人物がアカウ...

Uniswap V3で流動性提供を解説 (Polygon版)

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はじめに 前回の投稿で今年はマイニングで得たWETHをUniswap V3上で流動性提供をしてDeFi運用すると紹介しました.Uniswap V3の最大のアップデートポイントは価格レンジを指定して集中的に流動性提供を行える点です.こうすることで資本効率を高めることができ,流動性マイニングで得られる利益を最大化できます.しかしこの適正な価格レンジを決めるのが結構厄介で私も最初戸惑いました.ここでは流動性マイニング提供をこれからUniswap V3で始めようという場合に参考になるツールを紹介します. Uniswap V3の特徴 レイヤー2への対応はもちろん注目すべきポイントですが,最大のアップデートポイントは集中型の流動性提供です.Uniswap V2までは,例えばETH-USDCのペアで流動性提供を行う場合には全プライスレンジでしか流動性提供を行えませんでした.つまりは取引価格に関係なく1ETHと2700USDCを流動性提供すると0 USDから無限大までカバーするという仕組みです.この場合は流動性の提供は簡単で50:50でETHとUSDCをロックするだけでした.しかしこれでは,スワップ時に取引されるのはその時のETHの時価を中心とした流動性プールの一部しか使われません.これではロックされている資本に対して取引される資本の効率が悪いということで,Uniswap V3では指定プライスレンジに集中して流動性提供を指定できるようになりました.こうすることによってより集中した流動性提供が可能になり多数の取引が行われても価格のスリッページ(相場価格からの乖離)を防ぐことも可能になりました(もちろん限界はあります). もちろんリスクフリーではありません.いわゆるインパーマネントロスのリスクは増大します.ただこの仕組みによって今までよりも高い利率で流動性提供のリワードをもらえるようになりました.その他としては流動性プールの手数料が選べるようになったことで0.05%,0.3%, 1%から選択可能になっています.また流動性提供の証明は何かと話題のNFTで発行されます.あまりやる人はいないと思いますが,このNFTをマーケットで販売することも可能です(別のプラットフォームですが).商用利用に関してはビジネスソースライセンス1.1という形でリリースされています.これはSushiSwapなどのコ...

なぜSolanaとBNBへ投資を行わないか?

 はじめに 前回の投稿で,今年はDeFiへ本格参入すると紹介しましたが,そこで下調べした結果,SolanaとBNBは選択肢から外したと報告しました.ではなぜ自分はこの二つに投資しない決断に至ったか思考をまとめる意味で紹介します. BNB (Binance Smart Chain)の不適格理由 私はブロックチェーン技術で最も大切な部分は分散性とセキュリティーだと考えています.これがインフラ部分を担当するレイヤー1チェーンの場合には最もコアになる部分でセキュリティー, 高い耐障害性, 耐検閲性を実現しています.これらはスケーラビリティーとトレードオフの関係にあって全てを両立することは現在の技術では不可能です.これはブロックチェーンのトリレンマとして有名で,“セキュリティー”,“分散化”,“スケーラビリティ”は同時に2つの要件までしか満たせないという理論です.ETHのレイヤー1はこのうち”分散化”と”セキュリティー”を満たすように設計されています. その点でBinanceという発行主体が存在するBNBは不適格です.なぜならプロトコルの設計や運営にはBinanceとその利用者の意見が意図していなくても優先される可能性が高いからでこれは“スケーラビリティー”と“セキュリティー”を満たしていますが”分散化”が損なわれています.もちろんEVMとの互換性を備えたBSCは数年前までなら過渡期の妥協的な産物として許容されたでしょう.しかし現在,ETHはレイヤー2技術でスケーラビリティ問題をある程度解決できる目処が立ちました.こうなればわざわざBSCを利用しなくても同じようなユーザービリティーやコストでETH上で走るDappが利用できるようになっていくことが予想されます.それならわざわざ最も重要な分散性に問題があるB S Cを使う必要ないというのが私の考えです.ある種の思想の問題でもありますが,今はまだ過渡期でありますし,BSCの運営自体が完全なD A O運営に切り替われば状況は変わるかもしれません. ちなみにXRPが不適格なのは上記の考えとほぼ一緒で,発行主体がRipple社という一つの民間企業であることが理由です. Solanaの不適格理由 昨年最も勢いがあったのはSolanaではないでしょうか.メインネットが立ち上がるとあっという間に時価総額トップ10入りしてきたので驚いた...

2022年の投資戦略(DeFi編)

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はじめに もうすでに2022年もQ1の最終月になっていますが,1 月と2月に情報収集がほぼ完了したので投資戦略が固まりました.今更の感はありますが,セキュリティー対策を徹底した上でDeFiに本格参入してみようと思います.ただし,自分の考え方に沿った形,つまりはweb3.0のインフラ部分に関係するブロックチェーンで構築されたDeFiへ投資することを決めました.具体的にはETH (Polygon L2),COSMOS, Polkadot (ACALA)へ手持ちのトークンとその一部を税金が許容できる範囲でトレードし運用する予定です. Ledger Nano X を導入 こちらは定番のハードウェアウォレットなので昔から知っていましたがオンチェーンで暗号資産を扱うためには必須アイテムなので先月末に購入して設定を終えました.きっかけは,Coinbase Wallet Appが対応したことでそのキャンペーンの一環でCoinbaseエディションを購入しました.もちろんLedgerの正規ネットストアで注文してフランスのパリ本社から発送されてきました(DHLのログが確認できて安心です).こちらもebayなどで安く売られているものもありますが、絶対購入してはいけません.何故なら,すでにシードフレーズを盗まれていると購入後に設定を行って入金すると簡単に悪意を持った相手に資産を抜かれるからです. 購入する場合には正規代理店から新品を購入するのが必須で私はそのセオリーに従いました.実際に届いて中身を確認したのが以下の写真です. 質感はなかなか高級感があって好感が持てます.尚私が購入したのは,coinbaseエディションなので,筐体にはしっかりと”coinbase”と刻印されています.付属品にはUSB type Cのケーブルが含まれていますが,念のためハードウェアウォレットを使うときは必ずこの付属ケーブルを使うようにしています(USB-Cケーブル自体に細工されている場合に備えるため).こちらはKeplerやMetamaskなどのウォレットアプリと連携させて使用します. Defi運用に使うPC環境のセキュリティー対策 Defi運用に使うPCはセキュリティーレベルが高くハッキングリスクを減らせるものが望ましいです.そうなるとまずWindows OS系はターゲットになりやすくハッカー側の攻撃バリエーシ...