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2月, 2022の投稿を表示しています

レイヤー3が実現するフラクタルスケーリング

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はじめに ロシアとウクライナ間の緊張は収まる様子が見えず米国株式市場,暗号資産市場ともに完全に冷水をかけられた形で上昇相場へのきっかけをくじかれた状態です.数日前には,OpenSeaのユーザーがフィッシング攻撃によってハッカーにNFTを盗まれる事件が発生しており,また冬の時代到来の気配が漂っていますが,こういった時期には新しい技術開発が水面下で進んでいたりします.今回はStarkwareの開発チームが紹介していた以下の記事を元にLayer3の話題を取り上げようと思います.参考にしたのは以下のブログ記事になります. Fractal Scaling: From L2 to L3 https://medium.com/starkware/fractal-scaling-from-l2-to-l3-7fe238ecfb4f なぜレイヤー3なのか? Ethereumのガスコストは一時期よりも落ち着いてきましたが,まだまだ高い状態が続いており、そのため2020年から様々なレイヤー2が立ち上がりイーサリアムのメインネットワークはそれらの決済レイヤーとして機能するようになってきました.このレイヤー2技術の普及により今年から数年間で取引コストの大幅な削減,Defiツールサポートの増加,レイヤー2で提供される流動性増加によりエンドユーザーの活動の大部分はレイヤー2で行われるようになることが予想されています.このレイヤー2の技術は短期的にイーサリアムのスケーラビリティを劇的に向上させ,次々と登場する新世代のレイヤー1との競争力を維持していく利点があります.しかし,アプリケーションによっては、新しい別のレイヤーで対応した方が良いような、特別な調整が必要な場合もあります。そのためにStarkwareはレイヤー3を提唱しています. レイヤー3は、レイヤー2がVerifierスマートコントラクトをサポートできる限り、有効性証明を使って実現することができるようです。StarkNetのように、レイヤー2がレイヤー1に提出された有効性証明も使用する場合、レイヤー2証明の圧縮メリットとレイヤー3証明の圧縮メリットを掛け合わせた、非常にエレガントな再帰的構造を提案しています(再帰的構造の乗算効果を利用します)。つまり、各レイヤーが例えば1000倍のコスト削減を達成すれば、レイヤー3はレイヤー1の安全性を維

Polygon (MATIC) のステーキングとDefi体験

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はじめに 前回の記事でETHのレイヤー2を提供するPolygon (Matic)を紹介しましたが今回は実際にステーキングとDefiで運用した経験をシェアしようと思います.ご存知の通り,私は主に米国居住者むけに許認可を得ているサービスしか使っておらず,税金の申告が面倒になるので海外の大手取引所であるBinance, OKEX, Bybitは利用していません.ここでは米国居住者がMaticをUSDで購入してなるべくネットワーク手数料をかけずにPolygonネットワーク上でDefi運用できる方法を紹介します. Polygon (MATIC)のステーキング方法 まずPolygon(MATIC)をステーキングする場合には現在コストディアルなステーキングサービスは私の知る限り米国の取引所では提供されていません.そのためこの場合は,MetaMaskなど自分でプライベートキーを管理するタイプのウォレットからステーキングに参加する必要があります.もう一点注意することは,MaticのステーキングはETHメインネット上で実行されることです.つまり,Polygonネットワークのウォレットからはステーキングすることは出来ないのでERC20としてETHウォレット側にMaticを保持する必要があります. この場合,MaticはETHメインネットワーク上で送金,入金を行えば良いのでCoinbaseやKrakenなどから直接利用することが可能です.尚,ステーキングを行う時にスマートコントラクトの形で取引が行われるので,使用予定のウォレットには必要なETH (余裕を見て0.08 ETHぐらい)が保持されている必要があります. 実際の手順は以下の通りです.まず Polygon walletのページ にアクセスして自分のオンライン・ウォレットを接続してください. 次にPolygon Stakingをクリックしてステーキングを委託するValidatorを探します.ここでは,stake.fishを選択しました.ここは,f2poolの創業者が立ち上げたステーキングプールで信用度は比較的高い方だと思います(ただし判断は自己責任ですのでそこは自分で調べてください).Binanceのステーキングプールも存在してますが,commission feeは10%と割高です. Commissionがステーキングリワードからステ

SECがBlockfiへ1億ドルの罰金支払い命令(確定)

はじめに 昨年末Blockfiが暗号資産を預け入れると高利率の利息が得られるBlockfi Interest Account (BIA)サービスの米国市民への提供が未登録証券販売に当たると連邦レベルと州レベルの複数の証券取引委員会から調査されており,訴訟沙汰になっていました. Coinbaseが昨年夏ぐらいに同様のサービスを顧客へ提供する計画を発表しましたがSECからの注告で中止に追い込まれた経緯がありました.昨日はスーパーボールで暗号資産取引所の数社が派手にTV CM広告を流し,Coinbaseに至ってはCM宣伝の直後にサイトダウンするほどのアクスセスが殺到した矢先のニュースですが,本日この種の事例では史上最高額であるトータル1億ドルの罰金をBlockfi側が支払うことで和解しました. ニュース要約 以下は Politicoが報じた内容 を翻訳し要約したものです. 米国証券取引委員会と同様の訴えを起こしていた32の州は月曜日、暗号通貨の新興企業であるBlockFiが、デジタル資産取引をつかった違法な貸付事業を運営していた容疑を解決するために、トータルで1億ドルの罰金を支払うことで同意したと発表しました. SECは、BlockFiが過去3年間に投資家を欺き、無認可の投資商品を数十億ドル販売したと非難していました.和解の条件として、BlockFiは米国の顧客に対する新たな融資口座の開設を停止し、BlockFi Yieldと呼ばれる新商品をSECが規制する投資会社として登録することに同意しました。SEC当局は月曜日に記者団に対し、ニュージャージー州ジャージーシティを拠点とする同社が調査に協力しなかった場合、この罰金はもっと大きくなっていただろうと述べました。 BlockFiは、連邦政府(SEC)へ5000万ドル(暗号資産関連では史上最高額),また32州の法執行機関と証券規制当局によって起こされた同様の主張を解決するために、5000万ドルを支払うことになります。 2017年に設立されたBlockFiの人気は、投資家が保有する暗号の利回りを得ることができる同社の利子付きアカウントの提供を開始した後に爆発的に増加しました。BlockFiはその後、それらのデジタル資産を他の投資家に貸し出したり、従来の投資商品を購入するために使用したりすることになります。 高利回りを売りに、米国

Wormholeハッキング事件とL1ブリッジの潜在的危険性

はじめに 先日,Solana上のETHブリッジである Wormhole上で起きた約3億2千万ドル相当のハッキング は,レイヤー1ブリッジが抱える脆弱性懸念が現実に存在していることを露呈してしまいました. Wormhole事件の経緯 このWormholeハッキング事件の経緯は Chainanalysisのブログ に詳細が紹介されています.以下はそれらを参考に要約した内容になります. 米国東海岸時間の2月2日の午後1時30分,何者かによってSolana上のETHブリッジであるWormholeネットワークのスマートコントラクトの脆弱性を利用して12000 weETH (Wormhole ETH)が必要なE T Hの担保をロックアップすることなく不正に生成されました.そしてこのハッキングの犯人はそのほとんどをETHネットワーク上でETHに変換し自分のETHアドレスに送信,さらに残りのweETHはSolanaネットワーク上で4250万USD 相当をSolana USDCに交換しさらにSolanaとWrapped Solanaに交換することに成功しました. 以下のアドレスからそれぞれ,ETHネットワーク上に93750.97 ETHとSolanaネットワークで432661.16 SOLを保持していることが確認できます. ETH address: 0x629e7Da20197a5429d30da36E77d06CdF796b71A Solana address: CxegPrfn2ge5dNiQberUrQJkHCcimeR4VXkeawcFBBka 幸いなことに上記のアドレスはすぐに暗号資産コミュニティー内でハッキング事件関連のアドレスと事件発生とほぼ同時に認識され,現在は簡単に動かすことが難しい状況に置かれています(世界中の開発者からマークされて送金記録は完全にトレースされるのでハッカーは容易に動かせない状態です).また,Solanaの運営側が盗まれたETH相当を Wormholeネットワークに補填したことによって最悪の事態は回避されました. 今回の事件の問題点 Twitterで公開された @samczsunによるこのハッキング事件の見事な分析結果 は、L1ブリッジ実装の技術的複雑さとセキュリティ基準欠如の両方を浮き彫りにしています。 まずハッカーに利用された脆弱性はSolan

2016年8月のBitfinexハッキング事件の犯人逮捕

はじめに 米国司法省の発表 によると米国東海岸時間2月8日の朝,FBI捜査官が2016年にBitfinexのハッキングによって盗まれたBTCである450億ドル相当をマネーロンダリングした疑いで2名の容疑者の身柄を拘束しました. 捜査資料が公開されていますが,この2名の容疑者がハッキングを行ったかは定かではありませんが,確実にBitfinexより盗まれた約12万BTCを高度な手法でマネーロンダリングしていたようです. DOJによる発表内容 逮捕の決め手になったのは 以下の証拠 のようです。 Statement of facts page 17 of 20; 51. Lichtenstein Email 2 was held at a U.S.-based provider that offered email as well as cloud storage services, among other products. In 2021, agents obtained a copy of the contents of the cloud storage account pursuant to a search warrant. Upon reviewing the contents of the account, agents confirmed that the account was used by LICHTENSTEIN. However, a significant portion of the files were encrypted. (以下は日本語訳) 51. リヒテンシュタインのeメール2は、電子メールのほか、クラウドストレージサービスなどを提供する米国を拠点とするプロバイダーで保有されていました。2021年、捜査官は捜査令状に基づき、クラウドストレージアカウントの内容のコピーを入手しました。アカウントの内容を確認したところ、捜査官は、そのアカウントがリヒテンシュタインによって使用されていることを確認しました。しかし、ファイルのかなりの部分が暗号化されていました。 52. On or about January 31, 2022, law enforcement was able to decrypt several key files cont

ENSの仕組みと取得方法

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はじめに 結構前から気になっていたサービスの一つとして今回はEthereum Name Service (ENS)を紹介しようと思います.簡単な説明をすると,ENSを使用することでインターネットでのDNSのように人間が読める文字列にETHアドレス(0xから始まるアルファベットと数字の羅列)などを変換し面倒なアドレス確認の作業から解放してくれます.昨年にはENSドメイン保有者に対してENSトークンのエアドロップが行われ大変話題になりました(人によっては数万ドルぐらいのトークンが支払われました). ENSの仕組み ENS とは、Ethereumブロックチェーン上に実装された分散型、オープン、かつ拡張可能なネーミングシステムのことです。ENSの仕事は、”panda.eth”のような人間が読める文字列を、イーサリアムのアドレス(0x98ab….)、他の暗号通貨アドレス(別にETHだけに限定されていません)、コンテンツハッシュ(IPFSのCIDなど)、メタデータなどの機械が読める識別子にマッピングすることです。ENSは逆解決もサポートしており、正規名やインターフェース記述などのメタデータをEthereumアドレスに関連付けることが可能です。 ENSは、インターネットのDNS(Domain Name Service)と同様の機能をブロックチェーン上に実装することを目的としていますが、イーサリアムのブロックチェーン機能の制約により、そのアーキテクチャは大きく異なっています。DNSと同様に、ENSはドメインと呼ばれるドットで区切られた階層的な名前システムで運用され、ドメインの所有者はサブドメインを制御することができます。 .ethといったトップレベルドメインは、レジストラと呼ばれるスマートコントラクトが所有し、サブドメインの割り当てを管理するルールを指定します。誰でも、このレジストラの契約によって課されたルールに従うことで、個別の用途のためにドメインの所有権を得ることができます。ENSは、ユーザーが既に所有しているwebページのDNS名をENSで使用するためにインポートすることもサポートしています(IPFSと連携させることでブロックチェーン上にwebページをアップすることも可能です)。 ENSは階層構造なので、どのレベルのドメインを所有する人でも、自分自身や他人のためにサブドメイン

Polygon (MATIC)ネットワーク解説

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 はじめに 前回の記事でも取り上げましたがイーサリアムのメインネットはその成功の代償として 現在スケーリング問題を抱えており高騰するガス代はサービス提供者とユーザー双方にとって大きな問題になっています.2021年はそういった問題を解決するために様々なレイヤー2やサイドチェーンと呼ばれるスケーリングソリューションが普及し始めた年でもありました.その中でも昨年から成長が著しいPolygon(旧Matic)の仕組みについて今回は取り上げてみようと思います. Polygonとは? Polygon とは,イーサリアムと互換性のあるブロックチェーンや,それらを簡単に構築し相互運用するためのフレームワークの提供を目的としたプロジェクトです. Polygonの前身であるMaticは,2017年10月に立ち上がったプロジェクトで,イーサリアムのサイドチェーンであるPlasmaネットワークを使って,イーサリアムの性能向上を目指したのが始まりです.その後,2019年4月にCoinbase VenturesとZBS Capitalから45万ドルの出資を受けて,2020年6月にメインネットを立ち上げました. 2021年の2月に“イーサリアム互換ブロックチェーンのインターネット”を目指すとし,プロジェクト名をそれまでのMaticからPolygonに変更しました. PolygonはPoSのMaticネットワークをサポートする他,イーサリアムと互換性のあるレイヤー2にあたるブロックチェーンネットワークを構築・接続するためのプロトコルとフレームワークを提供します. PoSのMaticネットワークを利用した場合,ブロック承認時間は2秒未満,各サイドチェーンは1ブロックあたり最大65536トランザクションを含めることができます.このことが意味することは,取引コストを低減し10000TPS超えを実現できることです. 2021年に入りDefi, NFTの熱狂的バブルなどでイーサリアムネットワークが混雑しガス代が高騰する中,Maticはイーサリアムのサイドチェーンとしてスケーリングソリューションを提供することで注目を集め,独自トークンであるMaticの価格は大きく上昇しました. MATICの総発行量は100億で,チームとアドバイザーに20%,ネットワーク運用に12%, Polygon財団に21.9%, エコシ

GPUのETHマイニングパワー効率の比較

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 はじめに マイニング報酬がガツンと下がって落胆している人たちもいるかもしれませんが,良くも悪くもETHの開発遅れのおかげでまだまだ北米ではETHマイニング採算性は良い状態です.自分が住んでいる地域の電力料金が比較的安い(6.6 cent/kWh)ということもありますが,オレゴン州などではさらに安い値段の場所も存在しているようです.さて強気相場の後半になるとマイニング参加者が増えた結果ハッシュレートが上昇し採算性がどんどん悪化していくのは事実です.さらに最後には市場価格のクラッシュなどで価格の急激な下落は避けられないのは前回2018年の相場が教えてくれていますが,ここで振り落とされないためにはマイニングのハッシュレート当たりの効率が重要になってきます.ネットで調べてもただ単に適当なカタログスペック値を拾い集めた記事が多いので自分のこれからの投資計画の基礎データにもなるので手持ち主要機材のE T Hマイニングのパワー効率を計算してみました. ハッシュレートパワー効率の比較  ほぼHiveOS上で表示されているデータを使っているのでAMD系のカードではやや高めの数字が出ているかもしれません.計算結果は以下のとおりです. 現状ではなんと昨日購入したRX6800が最も効率の良いカードということになっています.ただしAMD系はワット数のソフトウェアでの表示値と実際の消費電力との誤差が大きいのでほぼRTX3070 non-lhrと互角と思って良いでしょう. パワー効率が一番悪いのは当然の結果ですが,RTX3080 LHRのカードになります.しかも実際はハッシュレートとパワー共にかなりばらつくので平均するとさらに上記の値より低いと思われます.健闘しているのはRadeon Vega系のGPU(WX8200, Vega64)でこちらはHiveOS上でメモリタイミングをゴリゴリに最適化したのでHBM2の真価が発揮された結果でしょう.CMP170HXでもHBMを採用しているようにメモリ帯域が効いてくるETHのハッシュアルゴリズムでは,HBM2搭載カードは古い世代でも健闘しています.もっとHBM2eやHBM3が民生品でも普及していれば今頃Radeonは最強のマイニングカードとして君臨していたかもしれません.HBMはシリコンインタポーザーが必要だったりパッケージングのコスト面でGDDR6に敗

ETH mining benchmark on AMD Radeon RX6800 (HiveOS)

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 はじめに 現在,AMDとNVIDIAそれぞれに分けてマイニングリグを管理していますが,近所のパーツショップに比較的まともな値段でAMD RX6800が入荷されたので,微妙な時期ではありますが,購入してしまいました.ついでに恒例のベンチマークをHive OS上で行ってみました. トラブル発生!→なんとかベンチマーク 最初は古くなったRX580を引退させるつもりで,RX6800を購入したのですが,開けてみてビックリなことに私のメインマイニングマシンではG P Uがサイズオーバーで固定できませんでした.RX5700xtも十分大型なのですが,最新のG P Uはオーバクロックさせると消費電力が半端な値ではないので放熱設計は各社工夫を凝らしているようで,見事にサイズオーバーの悲劇が発生しました.ちなみに購入したのは,ASUS-TUFシリーズでここまでサイズが大きいとは想定外でした(考えてみると同世代のASUS Strix RTX3070も長さが異常でした.まあここで諦めても良かったのですが,はみ出したまま組み付けてテストを試みG P Uが認識されないトラブルに苦しめられ,結局Windows機に組み込むのは諦めました. 幸いB550マザーのAMD専用にしているマイニングリグがあったので,そちらへ組み込んでテストを行いました.こちらはCPUマイニングを行なっている関係でそのままでは850Wの電源容量をオーバーしそうだったので,Vega64を一時的に取り外して空いた場所に,インストールする形になりました.さて肝心のハッシュレートは以下のような結果になりました。 ハッシュレートはOC設定の最適化後で大体62MH/sぐらい,コア電圧はまだ高目に設定しているので消費電力は追い込めば105Wぐらいまで減らせそうです.今回の購入したものは当たりバッチのようで効率はRTX3070 non-lhrと同等かやや良いぐらいでした.ちなみに数100ドル足すとRX6900xtも購入できますが,マイニング性能はやや向上するぐらいで電力効率は低下する傾向のようです.何よりBig Navi世代はGDDR6のタイミングなどを再設定しなくてもハッシュレートが出せるので,マイニング初心者にはありがたいかもしれません.ネットの記事を見る限りではBIOSも書き換える必要はないようです.発売当初にネット記事で見ていた報告