Uniswap V3で流動性提供を解説 (Polygon版)

はじめに

前回の投稿で今年はマイニングで得たWETHをUniswap V3上で流動性提供をしてDeFi運用すると紹介しました.Uniswap V3の最大のアップデートポイントは価格レンジを指定して集中的に流動性提供を行える点です.こうすることで資本効率を高めることができ,流動性マイニングで得られる利益を最大化できます.しかしこの適正な価格レンジを決めるのが結構厄介で私も最初戸惑いました.ここでは流動性マイニング提供をこれからUniswap V3で始めようという場合に参考になるツールを紹介します.

Uniswap V3の特徴

レイヤー2への対応はもちろん注目すべきポイントですが,最大のアップデートポイントは集中型の流動性提供です.Uniswap V2までは,例えばETH-USDCのペアで流動性提供を行う場合には全プライスレンジでしか流動性提供を行えませんでした.つまりは取引価格に関係なく1ETHと2700USDCを流動性提供すると0 USDから無限大までカバーするという仕組みです.この場合は流動性の提供は簡単で50:50でETHとUSDCをロックするだけでした.しかしこれでは,スワップ時に取引されるのはその時のETHの時価を中心とした流動性プールの一部しか使われません.これではロックされている資本に対して取引される資本の効率が悪いということで,Uniswap V3では指定プライスレンジに集中して流動性提供を指定できるようになりました.こうすることによってより集中した流動性提供が可能になり多数の取引が行われても価格のスリッページ(相場価格からの乖離)を防ぐことも可能になりました(もちろん限界はあります).

もちろんリスクフリーではありません.いわゆるインパーマネントロスのリスクは増大します.ただこの仕組みによって今までよりも高い利率で流動性提供のリワードをもらえるようになりました.その他としては流動性プールの手数料が選べるようになったことで0.05%,0.3%, 1%から選択可能になっています.また流動性提供の証明は何かと話題のNFTで発行されます.あまりやる人はいないと思いますが,このNFTをマーケットで販売することも可能です(別のプラットフォームですが).商用利用に関してはビジネスソースライセンス1.1という形でリリースされています.これはSushiSwapなどのコピープロジェクトを防止する目的でしょう.

相場が大きく動くとき以外はある程度のレンジに取引価格は収まっていることがほとんどなので,このプライスレンジを最適化することで流動性提供時の利益を最大化できます.しかし,最初は計算方法もわからず設定に苦労すると思います.実際私も最初使い始めた時は仕組みがわからずかなり戸惑いました.こういう場合は簡単なシュミレーションツールがあると便利です.ネットを調べてみたところいくつか見つかったので紹介していきます.

Uniswap Simulator

これが一番直感的できれいなGUIで使い易いです.ただしETHネットワークにしか対応していません.Uniswap V2との比較結果も出てきて非常にわかりやすくデータを表示してくれます.ここでは,1ETHをプライスレンジ,下限2500 USDCから上限3200USDCで流動性提供した場合の収益予測が表示されています.ここでUniswap V3で流動性提供を行うほうが圧倒的に収益性が良いことが確認できると思います(16.7倍!).この流動性提供を行うにはV3では1 ETHと1994.37 USDCが必要で合計4766 USD相当が必要ですが,V2で同じ利益を出そうと思うと79700 USDが必要なことが表示されています.7日間平均でのAPRは57.47 %,14日間平均では72.2%のAPR予測になっています.このツールを使うとUniswap V3の集中流動性の威力が実感できます.

GITHUB link:
URL:


Metacrypt Uniswap V3 Calculator & Simulator

こちらはPolygon, ETH両方に対応していて自分の現在提供している流動性設定を入れてもそれほど誤差はありませんでした.最初読み込むのに時間はかかりますが,実際にUniswap V3で流動性提供をしようとしているペアを選択し,プライスレンジを選ぶと自動的に日,月,年単位で実際に得られる利益とAPRを計算して表示してくれます.自動的にプライスレンジも提示されるのでそのままでも結構使えそうです.
尚Arbitrumなどはまだ取引量が少なすぎてデータの信頼性が低いので対応していないようです.レイヤー2対応は始まったばかりなのでこれからということでしょう.
ETH ~USDCの設定で生成した例をリンク先で閲覧できます.




Universe Finance

私はまだ調査中ですが,自動的に流動性提供のプライスレンジを最適化してくれるサービスもすでに存在しているみたいです.レイヤー2に対応したのかわかりませんが,確か同様なサービスを提供するCharmFinanceがPolygonネットワークへ対応する予定だったはずです(2022年Q2).こういうツールが普及してくれればもっと容易かつ自動で流動性マイニングの提供を最適化できそうです.

まとめ

Uniswap V3になってから流動性提供の設定が分からないという人は上記のツールを試してみてください.税金計算は面倒になりますが,年率50%から70%という利率は魅力だと思います.特に強気相場から今のようなレンジ相場に移行した場合は平均価格は横ばいになるのでインパーマネントロスのリスクが減り流動性提供で効率的に利益を上げることができます.レイヤー2にも対応済みなので小規模で始めてみると仕組みが理解できると思います.私はまだマイニング収益とcrypto.com経由で入金したUSDCで徐々に流動性提供を増やしている段階です.BlockfiにあずけていたETHを一部coinbaseに移したので,戦略が固まったらキャピタルゲインによる税金の許容できる範囲で一気に増やすかもしれません(まだ悩んでますが).なお数ETH規模で運用する人たちには関係ないでしょうが小規模で始める場合はETHメインネット上ではガス代がかなりかかるので手数料収入で回収しようとしてもなかなか利益が上がりません.その点,Uniswap V3がレイヤー2に対応したことはもっと多くの人たちにAMM型DEXの取引と流動性提供のチャンスが到来したと感じています.Polygonネットワークで利用した場合,スワップ,流動性提供,手数料の回収を複数回行っても1 Maticぐらいバランスが残っていれば全然問題なく実行できています.

またUniswap V3 APIとweb3モジュールを使った自作ツールはやってみたい課題で週末にpythonでコーディングしていこうかなと計画しています.取引部分のテストもテストネットを使えば実際の資金を使わなくてもシュミレーションできそうなので,徐々に下準備は整え中です.ETHとPolygonのブロックチェーンデータを参照する必要があるのでローカルでフルノードを立てようか少し迷っている段階です.今はとりあえずAlchemyの無料プランでpythonのweb3モジュールを試している段階です.できれば夏までに形になったものを紹介したいですがこちらはパートタイムでやるので暇な時間を見つけてコツコツやっていきます.技術的内容が多くなるので別のブログを立ち上げようか考えているところです.

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