Polkadot基盤のDeFiハブ ACALA (ACA)とaUSDの概要解説

はじめに

昨年末に注目を集めたPolkadotのパラチェーンオークションで記念すべき初のパラチェーンとしてオークションを勝利したのはAcalaプロジェクトです.AcalaはPolkadot基盤のDefiハブを目指すプロジェクトでステーブルコインのaUSD を発行及び流動性提供や分散型ファンドを実現しようという大変野心的なプロジェクトです.私もPolkadotには非常に注目しており,実際にAcalaのプログラムにも参加した経緯があるのでその内容も含めて今回はAcalaの紹介をしたいと思います.

Acalaの特徴

名前からしてすごいですが,Acalaは不動明王のサンスクリット語表記です.Googleで検索する時は”Acala cypto”を入力してください.でないと不動明王の画像がいきなり引っかかります笑.

公式websiteはhttps://acala.network/ですでにPolakadotからDOTを転送するブリッジ機能を備えたAMM型取引所のDAppであるAcala sSwapが立ち上がっています(https://apps.acala.network/).



ちなみにKusama上でもパラチェーンを持っていて、そちらはKaruraという名前のプロジェクトになります.プロジェクトの目的はずばりPolkadot上のDefiハブになることで現在は異なるブロックチェーンのDeFiユーザーや開発者がスケーリング問題やガス代高騰などを気にせずにAcalaネットワークに移行できる環境を整備しています.

ちなみにセキュリティーはPLOの仕組みによりクラウドローンで集まった大量のDOTをロックすることによって担保されており,Polkadotの強固なセキュリティー基盤を共有することで実現され得ています.そのため後ほど説明しますが、インフレーション型のトークン発行やステーキングを提供する必要がなくネイティブトークンであるACAは流通量がすでに決められており分配方法もすでに決定されています(ガバナンス投票次第ではこれから配る部分は変更される可能性あり).


ETH互換のレイヤー1チェーンの仕組みとスマートコントラクト

Polkadot上で動作するAcalaチェーン自体はEVM互換のスマートコントラクトに対応しており,イーサリアムとの互換性を備えています.このEVMはPolkadotのsubstrateの一部と考えられるためAcala EVMと呼ばれSubstrateとEthereumの両方の長所を提供します.

Substrate: Polkadotのブロックチェーン開発フレームワーク

EVMの開発者は最小限の操作で簡単にAcalaネットワークへ切り替えすることができPolkadotによる高レベルのセキュリティーと安価なガス代でDefiサービスの提供や利用ができるという特徴があります.

現在はアーリーフェイズ段階ですが,すでにPolkadot{.js}を実際に接続して試すことができます.ただしAcalaネットワークへのDOT転送はまだ一方向のみにしか対応しておらずXCMがPolkadotに実装されるまでは一度移動させた資金は元に戻せません(今年後半には実装されることを期待しています).

ACAトークンとステーブルコインaUSDの発行

AcalaはEVM互換のL1チェーンとして動作するのでネイティブトークンであるACAが使われます.ACAは主にユーティリティートークンとして機能し,取引の手数料支払い,ステーキング,ガバナンス投票に使われます.ステーキングプログラムはすでに始まっていますが,通常のL1トークンと違いインフレーション型の新規発行は行いません.具体的にはクラウドローンでロックされたDOTをステーキングしてその報酬の一部を使ってACAを買い上げでステーキング報酬として分配するというモデルを採用しています.そのためステーキングを行えば自分のACAシェアを増やすことができます.

次にaUSDはAcala上で動くDAppやDeFiに活用できる分散型ステーブルコインです.

これはETH上で提供されているMakerDAOのDAIと同様な仕組みでトークンの担保率に応じて発行と清算処理などが行われる仕組みになっています.現在は,DOT, ACA, LCDOTなどを担保に一般ユーザーでもAcala Appのミント機能を使って発行することが可能になっています.

注目すべきポイントは将来的にはクロスチェーンの暗号資産サポート,つまり担保としてETHやBTCなども受け入れる可能性に触れている点です.仕組みは異なりますがTerraなどはUSTの裏付け資産としてBTCを大量購入していますが将来的にはaUSDもBTCやETHを担保に発行されるかもしれず,BTC やETHを長期保有したい投資家にとって新たな投資先として魅力が生まれる可能性があります.またこういったプロジェクトにBTCやETHがロックされることは更なる価格の上昇圧力になるでしょう.

以下のスクリーンショットは実際に12.2 DOT を担保にして110 aUSDをミントした後の管理画面です.注意点としては50 aUSD以上からしか発行は行えません.担保には大体2倍ぐらいのDOTが推奨されています.これは清算リスクを取るなら割合を下げても問題はないと思います.Coinbaseのチュートリアルで数年前にMaker DAOにETHをデポジットしてDAIをミントしたことがありますが,手順は非常に似ています.



2億5千万ドルのaUSDファンドを立ち上げ

こちらは最近のニュースですが,他のPolkadot上のパラチェーンプロジェクトとVCファンドと共同で、2億5千万ドルのaUSDファンドを立ち上げ,PolkadotとKusama上でステーブルコインのユースケースを提供するアプリケーションの構築を行うスタートアップへの支援を行うことを発表しました.なおこのファンドから資金提供だけでなくAcalaのコアチームからの技術的な支援も得られる内容となるようです.

以下がAcala JapanがMedium上で発表した内容です.

aUSDエコシステム・ファンドの目標:
1. aUSDステーブルコインの強力なユースケースを持つPolkadotとKusamaエコシステムで構築された初期段階のチームを支援し、投資を促進する
2. クロスチェーンの活性化とPolkadotのネイティブステーブルコインaUSDの成長を通じて、PolkadotとKusamaのエコシステムを成長させる
対象プロジェクト:aUSDの成長と実用性を促進するPolkadotまたはKusamaを基盤とするDAppまたは初期段階のパラチェーン

サポートパラチェーン:Acala、Astar Network、Centrifuge、Efinity、HydraDX、Manta、Moonbeam、OriginTrail、Parallel、Zeitgeist。ファンドへの参加に興味のあるパラチェーンチームは、Acalaコアチームに連絡を取ってください.

Acalaはパラチェーンの中で最も多くのDOTをクラウドローンで獲得しそれを裏付けとしたステーブルコインとDeFiのハブになる目標を着々と遂行していくようです.

初期流動性マイニングのプログラム

Acala財団はAcala Swapの立ち上がりを記念してLCDOT/DOT、LCDOT/aUSD、ACA/aUSDのペアでAcala Swapの流動性提供をすることで、3つの流動性プールからACAを獲得することができるプログラムを2月10日から開始しています.プログラムは約6ヶ月にわたって提供される予定で合計で100万ACAが分配されます.
私は開始直後から参加してリワードをもらっています.ちなみにAPRはそれほど高くはありません.ACA-aUSDのペアが34.65%, aUSD-LCDOTのペアが20.93%といった水準です.ちなみにLCDOTとはクラウドローンで集まったDOTがロックされる代わりに参加者へ配られたトークンで私のようにクラウドローンに参加していないユーザーはDOTをAcala Swap上で交換することで取得できます.DOT-LCDOTペアも流動性提供できますが、こちらはAPR 6.49%とさらに低く設定されています.


おわりに

Acalaの概要と初期の流動性提供プログラムやファンドについて解説しました.Polkadot基盤のDeFiはまだまだこれから成長する可能性がありますしセキュリティー面や運営も他のEVM互換チェーンよりは安心できます.個人的には2022年に最も注目されると予想していますが,まだ対応しているDAppが限られているのでこれから話題になっていくでしょう.
残念ながらネイティブトークンであるACAは北米の取引所では上場していません(居住制限で取引できません).各プロジェクトに参加するためにはDotを購入してそれをウォレットアプリに転送する必要があります.MetaMaskへの対応はまだまだですが,Astarでやっと始まったばかりでこれから徐々に増えていくのでしょう.



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