ウクライナ政府が暗号資産で寄付を呼びかける
はじめに
ロシアによるウクライナ侵攻が始まってしまいましたが,ウクライナ軍の強固な抵抗により数日で陥落すると見られていた首都キエフはまだ持ち堪えています.今回のプーチン政権によるウクライナ侵攻は現在の国際秩序への挑戦であり,ウクライナの民間人や民間施設(住居,ショッピングモール)への攻撃は明らかな国際法違反であり断じて許されるべきではありません.
米国は経済制裁の一貫として,ロシア中央銀行の外貨準備すら取引制限するなど今まで聞いたことのない制裁措置を発動しています.
完全に世界から孤立したロシアですが,一方でウクライナには世界中から支援が集まっています.そんな中,ウクライナ中央政府が暗号資産での寄付を呼びかけて話題となっています.
ウクライナ政府による暗号資産寄付の呼びかけ
きっかけはTwitter上で先週から始まった投稿です.最初は,こういった混乱した状況を利用した詐欺なのかと疑われていましたが,ウクライナ政府公式アカウントであると外交官などから確証が取れ世界中から寄付が集まり始めました.
Tweet 全文;
"Stand with the people of Ukraine. Now accepting cryptocurrency donations. Bitcoin, Ethereum and USDT."
BTC - 357a3So9CbsNfBBgFYACGvxxS6tMaDoa1P
ETH and USDT (ERC-20) - 0x165CD37b4C644C2921454429E7F9358d18A45e14
注意事項:送金前にTwitterのオリジナルメッセージからアドレスを再確認することと,送金処理を行った後には取り消せないことに注意してください.現在はメインネットワークで募金を呼びかけているのでETHとBTCの送金の場合には数ドルから10ドル程度の送金手数料がかかる可能性があります.
Uniswapはウクライナ政府のためにERC20 トークンのスワップサービス開始
ウクライナ政府は現在ETHとUSDT(ERC20)のみを受け付けているため,その他のERC20トークンでは直接寄付を受けられない状況でした.そこでUniswap LabはERC20のその他のトークンで寄付を行えるようトークンをスワップしてそのまま送金できるサービスを始めたました.ログを見るとUniswap V3 からの送金が確認できます.
Gavin Woodの呼びかけに応じる形で3月1日からPolkadotでも寄付の受付を開始しました.
Gavin Wood氏は宣言通り570万ドル(6億5880万円)相当の寄付を送付しました.
Dune analyticsで累計のETH寄付量の統計を見られるようになっています.3月3日朝の時点でETHだけで5244 ETH以上が送付されたようです.米ドル換算では1515万ドル(17億4千万円相当)が世界中から集まったようです.
まとめ
私も個人的にロックされていなかった150 USD相当のETHをすでに寄付しました.数年前なら中央政府が暗号資産を使って公式に支援を呼びかけるなど考えられませんでした.ここ数年で世界中で暗号資産の認識が変わったことを実感します.ウクライナの地方議員の一人は2020年当時で2400万ドル相当のXMRを保持していることを公表していますが,こういった人たちが国家の非常事態で中央政府に暗号資産での寄付呼びかけを提案したのかもしれません.
一方でウクライナ政府はロシアユーザーの暗号資産口座凍結を世界中の取引所に呼びかけましたが,こちらは全て拒否されました.当たり前の話ですが,いくらプーチン政権によってウクライナ侵攻が行われているとしても,ロシアの一般国民には罪は無いわけで法的根拠もなく口座凍結はできないのは当然です.また暗号資産の概念として,いかなる中央集権的なコントロールも受けないという思想からもロシアユーザーへの口座凍結措置は相容れない考え方でしょう.
いずれにせよこういう国家の緊急事態には暗号資産が威力を発揮することを証明できたのではないでしょうか.ロシアではルーブルの急落によって富裕層がUSDTとBTCへ資金を逃避させており,ウクライナでも同様の動きが見られるようです.
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