世界同時金融引き締めと暗号資産への影響
はじめに
皆さんもご存知の通り米国のFRBは利上げを行い同時に金融緩和政策からの脱却つまり、QT (Quantitative Tightening)に移行しました.FRBは6月1日から月475億USDを上限に,償還を迎えた国債などの再投資をやめる形で減額を始めることをすでに発表しています.
気になるところはこれが暗号資産にどういった影響を与えるかということです.
今回は簡単にQTの規模や経緯と暗号資産市場へどういう風に波及効果が及ぶのか考察していきます.
世界中の中銀はこれから年2兆USDペースでQTを進める予定
まずは日経の記事から読んでいきましょう.
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN310040R30C22A5000000/
先程も述べたように米国は6月から月475億USD相当の償還を迎えた国債などの再投資を停止します.世界中の中央銀行も同じアクションを取るとすでに発表済みでその総額は年間2兆USD規模に及びます.今回のような世界同時かつ大規模にQTが行われるのは初の出来事です.これはコロナウィルスの感染拡大による都市封鎖の補償として各国政府が大量の給付金を国民に配った結果でもあります.また感染拡大が一旦収まり,感染のコントロールが可能な状態まで回復すると今度は鬱積していた消費が戻り急激に消費経済が加熱しました.とくに米国ではサービス業でこの傾向が顕著であったと現地に住んでいる身としてはひしひしと感じています.レストランはロックダウン期間中に閉じてしまい,そこで働いていた従業員の多くが解雇されました.政府の手厚い給付金と失業手当のサポートもあって,いざロックダウンが解除されてもそういった一度労働市場からいなくなった人々は戻ってこなかったのです.これは,様々な理由が考えられますが,引退年齢に達していた人たちは空前の資産バブルで引退資金が貯まり,コロナのパンデミックによって死を身近に感じると皆が残りの人生を自分の好きなこと,または自分の愛する人たちと過ごしたいと考えたのでしょう.これは人間として自然の流れといえます.
また働き盛りの世代はロックダウン解除後も支給される政府の手厚い失業保険でいままでもらっていた給料より,失業手当のほうが多いという現象が起きました.これがサービス業で人員不足が続いた主な理由でしょう.レストランはいままでにない時給で人員募集をかけています.もともと特別なスキルが必要ない職種だったはずが今では工場である程度の年数トレーニングを受けた作業員や組み立て工レベルの給料を提示するレストランや小売点もでてきました.
市場原理というものは残酷で,こうなると高い給料に引かれて他の産業から人の移動が始まります.そのため製造業は大量離職による作業員不足に苦しめられ,新たに募集する場合はさらに高い時給を提示するしかありませんでした.このサイクルが続いた結果,現在は米国の地方都市レベルでも異常な賃金でのオファーやボーナス提示による新規人員の募集を見かけます.
賃金の上昇は2つの意味でインフレーションを悪化させます.ひとつは雇用された人が給与を得ることで消費が活発になることで需要が生まれることです.これは非常にわかりやすい景気の好循環気に現れる自然な流れです.2つ目が従業員の賃金上昇によりそれが消費者が購入する販売価格へ転嫁されることです.この部分には供給制限による材料費高騰も含まれます.つまり景気は好調の中でロシアのウクライナ侵攻が生じた結果,かなり強いインフレーション圧力がかかっているのが現状です.
各国中央銀行はこれに対抗する形でQTと利上げを通じて労働市場と需要をコントロールしようとしているわけです.ちなみに供給サイドのインフレーション圧力はまったく次元の違う話になります.これは供給網の再構築とバックログが片付くまで数年続くでしょう.
暗号資産への影響は?
一つ言えることはBTCを始め,数ある暗号資産はリーマンショック後に生まれて,今まで金融緩和の世界でここまでの規模に成長してきました.前回のオイルショックでインフレーションが発生した当時には当然ながら存在すらしてませんでした.この部分は見過ごしてはいけません.つまりいまはまったく違う市場環境でどういったことが起こるのか誰にも予測不能な状態です.データがそもそも存在していないので,暗号資産を何か他の資産と似たものと仮定して予想するしかありません.
コモディティーとして考えた場合
これは特にBTCがデジタル・ゴールドだと主張する人たちの意見でしょう.コモディティーであればこのインフレーション下では価格は上昇する可能性が高いです.ただし,それには確かな需要が存在しないといけません.現在は次の半減期までのサイクルの底であると考えるとこの説はさらに補強されます.
債券として考えた場合
これは主にPoSが終わったあとのETHに当てはまります.債券をトレードしている人たちはかなりの流動性を提供していて,この資金の数%でも流れこめばそれはプラス材料になるはずです.しかもETHはThe Mergeが終わると新規発行量が激減します.EIP-1559でベースフィーが焼却されて流通量から取り除かれる措置は残るので,ETHはデフレーショナリーな資産になると予想されます.希少性で価値が高まる上に実際にスマートコントラクト市場では絶対王者として君臨し続けるわけです.これは非常にプラス材料と言えるでしょう.現在のマクロ経済環境下ではPoSによるステーキング報酬も債券トレーダーに魅力的に映るでしょう.この可能性は非常に高いです.
その他のアルトコインは?
私は非常に悲観的です.前回のETHがそうであったように急激に実アプリがない状態で資金だけ集まり膨れ上がったプロジェクトは特に危険です.現在はピーク価格から88%戻したという銘柄も存在しますが,9割を超える下落は覚悟しておいたほうが良いでしょう.
しかし人によってはチャンスかもしれません.しっかりと生き残りつぎの上昇サイクルで大きく伸びる銘柄が見つかれば,それは大きな利益を得る機会であるからです.私はいくつかめぼしいものをピックアップ済みでそれらをこつこつドルコスト平均法で積立予定です.
まとめ
結論は,暗号資産市場にとって現在のマクロ経済状況は未知の領域で,これから試練を受けることになりそうです.多くの人がこれが未来のお金と信じていれば底入れと同時に大きく上昇するかもしれませんし,まだまだ下落が続くかもしれません.
私のできるアドバイスは,自分の投資した銘柄が信じられるのなら保持しなさいということです.未来を想像できるのならそれは現実になる可能性が高いです.自分が納得する答えをもっているのなら持ち続けるのは悪い選択肢ではありません.また逆に損失がひどい場合は税金でロスを報告するために一旦売却後に買い戻すという手もあります.これはそれぞれが置かれた税金のシチュエーションによって異なるでしょう.
冬の時代は厳しいと感じるかもしれません.しかし景気はサイクルがありBTCには幸い半減期というイベントの結果生じるブルサイクルが存在しています.こういった相場が落ち着くときには新しい技術開発が急速に進むものです.つまりはここでいかに仕込みを行うかで投資の成績も違いが生まれるということです.この部分を肝に命じて考え行動していくと良いでしょう.
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